さて、今回は最近のめり込んでいる曲の紹介です。 今まで身近にあったのに、なんとなく見過ごしてきて、ある時、ハッとそのよさに気付くことがあります。音楽でも、改めてじっくり聴いてみると「なんていい曲!」と感じることが時々あります。私もこの歳ですから、これまでにたくさんの曲を聴いたり、演奏したりしてきましたが、今でも時々そんなことを感じることがあり、まだまだ作品の新しい魅力を発見できる喜びを感じさせてもらっています。 最近、そう思った曲が2曲あり、この2曲ばかり聴いているのですが、一つはフォーレのレクイエム、もう一つはサンサーンスの交響曲第3番「オルガン付」なのです。 フォーレのレクイエムは、名曲ではありますので、CDの初期の頃から、クリュイタンスの演奏をもっていましたが、通して聴いたことが本当に一度もなかった。最初のキリエを聴き始めるとどうしても冗長に感じて、いつもそこでストップという具合でした。 ところが昨年BS朝日「エンター・ザ・ミュージック」で放映されたこの曲の特集で、この番組の進行役である指揮者の藤岡幸夫氏が4曲目「ピエ・イェズ」5曲目「アニュス・デイ」の美しさを絶賛しており、その話の後の実演で、その清澄で純粋な響きの虜になってしまいました。こんな美しい曲と今まで向き合ってこなかったなんて…。もったいないことをしていたものです。 その後、改めてクリュイタンスの演奏を聴いてこの曲を堪能をしていましたが、4曲目以降が特にお気に入りとなりました。終曲の「楽園にて」による幕切れも絶品ですね。ちなみに、この曲のオーケストラ(第3稿)にはホルンが4本使われていますから、いつか演奏する機会もあるかもしれません。演奏機会の多いモーツアルトのレクイエムにはホルンがなくいつも寂しい思いをしていますから…。後で知りましたが、この曲には3つの異なる版があり、そういったことも私の興味関心を引いてくれました。 ところで、クリュイタンスの他に素敵な演奏はないかしらと例のNML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)でいろいろ試聴したところ、2つの素敵な演奏に巡り会いました。「ピエ・イェズ」のソプラノ独唱は、ほとんどの演奏がヴィブラートをかけて朗々と歌われるのに対して、この2つの演奏ではノン・ヴィブラートで歌われています。透明でピュアな歌声が、この曲の禁欲的で清楚な感じをいやが上にも高めています。ジェレミー・サマリー指揮オックスフォード・スコラ・カントルム、オックスフォード・カメラータ(Naxos)の方は第1稿。管楽器は使われていませんが、弦楽器とオルガンが中心となったシンプルな編成が逆にこの曲の本質に迫っているような感じがします。ナイジェル・ショート指揮ロンドン交響楽団室内アンサンブル、テネブレ合唱団(LSO Live)の方は第2稿(ジョン・ラター校訂)。管楽器は第3稿ほどではありませんが、大方は含まれています。ともに録音が極上で、オルガンもバランスよく収録(従来よりはかなり聞こえる!)されており、この楽器の存在感を大きく感じさせてくれます。
by htskawa
| 2017-06-25 21:18
| Classical CD
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