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金管楽器奏者はいつまで…その1
久しぶりの更新となります。(言い訳をさせてもらうと、昨年度末の怒濤の忙しさと新年度になってからの異動のばたばたでなかなか更新する余裕がありませんでした…。)

さて、今回は管楽器奏者のプレイできる限界という少し重い話題について考えてみたいと思います。多分、単純に音を出して楽器を演奏するのであれば、かなり高齢になっても吹くことは可能でしょう。それが、芸術的、音楽的なものであるかどうかは別としてですが…。

楽器演奏者の宿命ですが、豊かな音楽性、巧みなテクニックの他に、音質・音色という「音そのもの」の問題があります。音楽性やテクニックは本人の才能や努力、周りの援助によって向上していくものなのですが、特に管楽器においては、「音そのもの」については自分の意志や努力によって変えることはなかなか難しいものであると経験上認識しています。

音色・音質というのは大切なもので、実際にオーケストラで演奏していると、同じ楽器で出している音でも、「思わず聴きほれる音」「合わせやすい音」「周りととけやすい音」もあれば、「合わせづらい音」「ちょっと一緒に演奏したくないような音」など様々です。それが周りの人たちの活動意欲につながっている場合もありますから、活動全体においては、かなり大きなウエイトを占めていると
言ってもよいでしょう。(他にも、音楽性、芸術性、運営、人間関係、年齢構成等いろいろな要素があります。)

自分の吹いているホルンについて考えて見ると、音の改善・改良ということで、楽器やマウスピースを替えたりしますが、基本的に出す音というのは、やはりその人独自のもので、そういった外的な要因では大きく変えることはできないと思っています。「高い楽器だからいい音が出る」「こんな機能のある楽器だからいい音が出る」ということはありえないわけです。(この点については、異論のある方もいらっしゃると思いますが、基本的に出す音という意味でとらえてください。また、プロフェッショナルな奏者のレベルでは、楽器等の変更は、微妙な音質・音色の変化に結びついてはいます。)

管楽器の音色・音質は、奏者の唇、歯並び、口腔内の形、気管などその人固有のの身体的な要素が大きく関わっていると考えています。そうしたものがいろいろ複雑に絡み合って作られるアンブシュアで作られたマウスピースの振動が、楽器という拡声器を通して、その楽器の音になるのですから、いかに拡声器が優れていても、元々の振動が悪くてはいい音になるはずがありません。
上記のように考えると、よりアンブシュアに近いマウスピースを替えるというのが、手っ取り早い音色・音質の改善・改良策とも言えることになります。あくまでも高いレベルの話ですが。これとは別に、マウスピースを替えると「演奏のしやすさ」が変化するという面は確かにあります。乱暴な言い方にはなりますが、金管楽器の場合は、浅いマウスピースだと高音が出やすい、深い場合は低音が出やすい、小さいマウスピースは高音が出やすい、大きいマウスピースは低音が出やすいということになるわけですが、それの伴い音色や音質も変化していきます。(これもある程度高いレベルでの話です。)

基本的にいい音色・音質で楽器を吹くことができるようになるには、このアンブシュアをよりよくするしかないと思います。このアンブシュアの形成期、つまり楽器の入門期に、適切な指導を受け、いい音のイメージを持ってロングトーンをしっかり行うこと等が望まれますが、多くの場合はある程度アンブシュアの基礎が固まってしまってから、あれやこれやと考える力が付いてくるわけです。仕方がないこととは言え、入門期の練習が、その人の楽器人生(特に音質・音色)に大きく影響していくことになるわけです。「音が悪いからソロを吹かせてもらえなかった」「いい音が出ないから楽器を続けることをやめた」といった話は今までよく聞いてきました。ということで、本題は次回に(続く)
by htskawa | 2017-05-10 23:07 | Music
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